日本のスマブラDX界隈における現状の問題点とその解決策

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こんにちは。わっちです。

今まで改行を句読点の代わりに使っていましたが、どうやらそれは間違っていたようです。皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

 

海の向こうアメリカではe-sportsのタイトルとして飛躍的な進歩を遂げているスマブラDXだが、原産国である日本の界隈では今一歩伸び悩みをみせている。いったい何がアメリカのDX界隈と違うのだろうか。私が日本と海外を行き来し分かった界隈の問題点を「あらゆる面での人数不足」「足かせとなっている環境問題」という2つの側面からみていきたい。

 

 

 

【あらゆる面での人数不足】

あらゆる面とは選手、大会団体、技術者、サポーターと、e-sportsの種目として成立させるためには欠かせない存在たちである。そんな欠かすことのできない多くの面で人数不足、もとい人手不足という問題を抱えている。

 

  1. 選手

プレイ人口が500人以下、その中でもアクティブ人口、つまり大会に参加したりオフ会に参加したりネット対戦したりという人数は約200人。スマブラDXに触れたいなと潜在的に思っている人たちをオフ会や大会に斡旋し切れていない。

 

  1. 大会団体

大学大会⇒大学側が学生以外の入退出に厳しく機材が集めにくい。

ローカル大会⇒ギャンブル法などの関係でゲーム屋での開催が難しい。

中規模大会⇒会場の少なさと機材運搬が難しい。また、倉庫代などの負担が大きい。

 

大規模大会⇒日本国内で会場を押さえホテルと連携を取るなどのノウハウがある人、及び資金が足りなく、スタッフが殆ど選手と兼業であるため人手が足りない。また、200人以上の規模の会場の確保が金銭、スケジュール面で難しい。

 

  1. 技術者

配信関係⇒大会のスコアボードの編集から音響の調整のようなスペシャリスト。実況者や解説者など視聴者の為のスペシャリストが少なく、トレモやオフ会配信などリアルタイムで視聴できるコンテンツが少ない。

 

動画関係⇒大会やオフ会などの動画のアップと編集、コンボムービーやPV、ノウハウ動画やトレーラーを作成する人。

 

ゲームデータ⇒辞書的な役割としてスマブラDX対戦攻略指南があるが、質疑応答の場や映像でのノウハウの共有、具体的な用法などが不足している。プレイヤー情報も少なく誰に聞けばいいのかが分かりにくい。

 

  1. サポーター

スポンサー⇒現状スマブラDXの選手及び団体への日本団体スポンサーは無い(こまどり氏及び村人氏が現状個人スポンサーとして存在する)

 

視聴者⇒選手や一部ゲーマー以外に配信先であるTwitchが浸透していない。ニコニコ動画などの和製配信に比べて野良の視聴者があまりいない。

 

広報宣伝⇒そもそも大会やオフ会などが行われているということを拡散しきれていなく、誰かしらのスマブラ勢をTwitterで見つけるか、見つけられたときのみ気がつくことが多い(最近はめがね氏のブログZero氏のニコニコ配信とRTAjapanなどのおかげで増えている)

 

 

 

【足かせとなっている環境問題】

もうひとつの問題である足かせとなっている環境とは大まかに言うと「法律」「文化」「労働」の3つがある。

 

  1. 法律

参加費を賞金にできないため、海外のようにポッドボーナスで規模の大きさをアピールすることができない。そのため強豪選手がこなく選手も集まりにくい。そしてそれは視聴者及び参加者が得にくいことにも繋がり、スポンサー獲得のしにくさにもにも繋がってくる。

 

  1. 文化

日本はゲーム大国でありながら「ゲーム=子供が遊ぶもの」という偏見が強い。また、ゲームがうまくても将来性がないという考えなどから、日本にはe-sportsという文化がなかなか定着しない

 

  1. 労働

日本では会社員になると連休が取りにくく、自分の住んでいない国内の大会や海外の大会に参加しづらい。

 

 

 

また、1番の「法律」と3番の「労働」についてはより掘り下げて解説する。

 

◆法律面における問題点

  1. 参加料積み上げ型

世界のe-sports大会ではEvolutionなどのように大会参加者の参加料を積み上げ、それを原資としながら賞金を提供する形式の大会がある。しかし、この種の賞金制大会は少なくとも我が国においては刑法賭博罪に抵触する違法な行為となる。

我が国において参加者の参加料を積み上げて成績優秀者になんらかの「褒賞」を提供する場合には、刑法185条の例外規定として定められている「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」に当てはまるもの、すなわち現在の法的解釈に基づけば1万円以内程度の日用品に留めておく必要があるのだ。現金を褒賞として提供する事は、1円からでも「違法」となる。

 

  1. 第三者によるスポンサー制賞金大会

参加者、および当該イベントと完全に利害関係のない「完全なる第三者」が協賛する形で賞金を拠出する形式においては、大会賞金を現金で提供する事が可能。また、実はこういう形式の賞金制大会においても、その参加料が大会の運営費を充足する為に使われる(=賞金に積み上げられることがない)限りにおいては、大会参加者から参加料を取ることも可能。家庭用ゲーム、アーケードゲームタイトルを利用した賞金制大会で特にゲームメーカーが賞金を積み上げる形式のものは、その実施方法次第では景表法の規制対象となる。景表法の規制対象となった場合、賞金上限は10万円を超えてはいけない。

 

消費者庁判断としては、技術向上の為に繰り返しのプレイが必要であり、有料ユーザー以外の者(=ゲーム購買者/アーケードプレイヤー以外の者)が成績優秀者として賞金を獲得する可能性が低いと考えられる大会の場合は、本体商取引に対する経済的価値の提供とみなされ景表法の規制対象となるとの事である。

 

即ちe-sportsとして互いの技術を競い合う形式のゲームタイトルであればあるほど景表法の規制範疇に入りやすくなり、一方、運ゲーであればあるほど、景表法の規制範疇からは除外される。(本体商品取引が賞金獲得の要件となり難い為)

 

  1. ゲーム屋やバーによる大会の開催

任天堂HPにある「Q&A」に掲載されている内容。当該ページには、次のように記されている。

 

料金を受けない場合でも、お店に置いて使用させる行為は、営利目的を有していると解されますので、各権利者からの許諾が必要となります。当社では、当社製ゲーム機器およびゲームソフトの営利目的での利用(商業利用)について、許諾を行っておりません。ご了承のほど、よろしくお願いいたします。

該当ページ⇒【その他】任天堂のゲーム機をお店に置いてお客様に遊んでもらおうと思っていますが、たとえ無料でも、任天堂から許可を得る必要はありますか?

    

上記の理由からに海外ローカル大会のような開催が難しい(ゲームバーなどは存在するが任天堂のソフトを扱っている店舗は無く貸しスペースにおいて持ち込み以外では不可能)。仮にスポンサードされてアメリカに長期滞在できたとしてもアスリートビザのようなビザを取得できない入国できなくなる(Leffenのビザ問題が記憶に新しい)。

 

 

 

◆労働環境における問題点

 全員ではないが仕事が原因で引退する人が多く、その理由として「連休の取り辛さ」が多く挙げられる。基本的に大規模大会はアメリカで開催されており、時差の関係でどうしても参加が難しい。文化的に皆勤賞という点が評価されやすく、そもそも休暇が取りにくいうえ、有給に理由が要求されることもありゲーム大会や旅行が理由として受理されないことがある。

 

また、日本は通常勤務の拘束時間も長い。残業を美徳と考える文化が存在しており、練習時間や対戦経験に時間を割くのがなかなか難しい。このような労働環境からオフ会や大会も祝日や週末でないと参加人数が見込めない。一方、時間のある学生は飛行機代と滞在費などがきつく、英語の壁があるため節約などの工夫が難しい。

 

このプレイヤーなら世界レベルで通用すると筆者自身が確信を持って感じた選手が、仕事や世界で戦うにはあまりに時間が足りないという理由で引退しており、やるせなく感じている。

 

 

 

【現状を踏まえたうえでの課題とこれから】

 現在の日本では上に挙げたような2つの側面が悪循環のように作用している。慢性的な人数不足が技術の上達や大会の開催を阻害し、法律や労働環境もそれに助長している。日本での環境改善は難しい。かと言って環境の良いアメリカでは金銭的にも法律的にもプレイヤーとして移住するにはまだレベル格差から難しい。ではそこでどうすればいいのか、筆者の考えとしてはスマブラ先進国であるアメリカの助けを得て良き所を模倣し、その後に日本ならではの個性を磨く」ことが今後の課題だと思っている。以下は具体的な解決策の提案である。

 

海外の視聴者に大会を見てもらい認知される

日本だけでなく海外の視点からでもスポンサーがほしいと思う注目度を得る。

 

海外選手に大会に参加してもらう

元々日本は観光地としても悪くなく、料理や四季、クールジャパンなどから来日している選手は多い。それらの選手に参加してもらう日本の大会において、多量の新規獲得は不可能では無いと考えているが、きっかけが無いと難しい。しかし、規模が大きくなる事による恩恵は多いと考えている。大会運営側からみれば負担は増えるかもしれないが、参加者が増えれば大会はより華やかなものになっていき、その華やかさがまた参加者を生む。そして、多くの人間(周りの人間)がやっていることに興味を持つのが人間だ。そう筆者は考えている。参加者が参加者を生む良い連鎖を作りたいのだ。

 

Smash.ggを利用した日本での大規模大会の開催

日本では浸透していないショップ機能やドーネーションドライブなどの利用を試みる。法律的問題から直接的なポッドボーナスは無理でも、有名選手の招致や大会周りの資金繰りなどを改善し、パフォーマンスの高い大会を開く。法律に基づいてできる限りの賞金授与を考えた大会パフォーマンスの向上は注目度と参加者の獲得につながる。

 

海外に遠征しやすいサポート体制を構築し送り込み、世界で通用する選手を増やす

鶏口牛後も良いが、世界ランクで30位以内、できるならば15位以内を争える日本人選手を一人でも増やす。世界大会で活躍する選手はスポンサードなどの恩恵を得られる。また、その選手から出身国への興味などにつながり国内の大会参加者や視聴者が期待できる。ノウハウを共有できる強豪選手の存在は、国内レベルの向上にもつながる。

 

Rudolph選手という世界へ送り込むための切り札

プロプレイヤーとして先行したaMSa選手に続く選手として、筆者はRudolph選手をはじめのサポート選手として見ている。純粋な実力もさることながら、全てをかなぐり捨てても強くなろうと考えているその姿勢は現状の問題をカバーできるほどである。日本人は環境背景もさることながら、ある程度の保身をしなければならない。世界規模で戦うには、全てをスマブラDXに捧げなければならないほどに環境格差は大きい。

 

劣悪な環境において大成するのは非常に難しく、現在では数えるほどしか大成していない。しかし、彼はスマブラDXに対し並々ならぬ情熱と執着がある。彼に今足りないのは海外環境での修行であり、それも一ヶ月以上の長期的展望でみたときに覚醒できるだけのポテンシャルを秘めているのは間違いなく彼だと考えている。(彼と自分は幸運なことに色々な背景を経て正社員ではありません。なので、お金の問題と場所の確保さえ解決できればすぐに行動を起こせます。)

 

 

 

以上のように海外の補助を経て、日本のスマブラDXシーンが世界一でなくても上位の一員になれればと考えている。具体的にいうならパンダグローバルが設定しているトーナメントの規模選定システムに基づくCランク前後の大会になることが目安。そこから日本でしか出来ない事や特徴を生かして個性を出すことで、環境の向上の歯車は初めて動き始めると考えている。

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自分がメインで動いているのは海外との交流である。そのため出来る限り海外大会の参加や、一緒に参加した選手のサポートを行ってきた。しかし、労働環境が劣悪だったことや資金面の枯渇と、行動することが徐々に難しくなってきている。おそらく、来年がラストチャンスだろう。

 

 

 

【最後に

ゲーム界隈全体で見ると海外で賞金総額が約22億円の大会が開催されたほか、日本初となる給与制のプロゲーマーチーム(DetonatioN FocusMe)の誕生、プロゲーマーを育成する専門学校が開校されるなど、とにかく明るい話題が多くなってきました。テレビで取り上げられる機会が増えたことで、日本にも徐々にe-sportsという存在が認知されてきています。他のタイトルが盛り上がっていくなかで、スマブラDXにも海外同様の盛り上がりを見せてくれるだけの素晴らしいポテンシャルがあると僕は信じています。そして、その盛り上がりが他の界隈に良い影響を与えられたら何よりです。それがまた良い流れを生んで、さらにスマブラDXが盛り上がってくれたら嬉しいです。自分の好きなゲームを多くの人と共有できるということは素敵なことだと思います。日本でスマブラ5神とデミゴッドが優勝を争うような大会を毎年開催できる環境に持っていくことが僕の最終目標です。そう思えるゲームに出会えた事を感謝しつつ記事を終わりたいと思います。

 

長くなってしまいましたが、以上が自分の考える日本スマブラDX界隈の問題点と解決策でした。

 

 

 

【この記事に関わった人】

文章:f:id:mgn_ssbm:20170829212820j:plainわっち@watch_ssbm

校正と編集:f:id:mgn_ssbm:20170829212947j:plainめがね@mgn_ssbm